ヘンリー・ムーアの彫刻が22万円?


英日曜紙オブザーバー(電子版)の報

「2005年12月に盗まれた英国の彫刻家ヘンリー・ムーアの時価300万ポンド(約4億3000万円)のブロンズ像が溶かされ、スクラップとして約1500ポンド(約22万円)で売却されたと警察当局がみていると報じた。金属需要が高い中国に売られた可能性があるという。

 ブロンズ像は、1969年から70年にかけて作られた「横たわる人体」(長さ約3メートル、高さ約2メートル、重さ約2トン)。英南東部のハートフォードシャー州の彫刻公園から盗まれ、当局が探していた。」
http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009051801000337.html



裏ルートとかで売ればもっと高くなっただろうにねぇ。
本当に利益がある方法を取ることができれば、ヘンリー・ムーアの作品は人目に触れずとも残っていた可能性が高かったのではないでしょうか。美術品って高いんだよ!ということをもっとみんなでアピールしましょう。

阿修羅展

平城京遷都1300年を記念しての展覧会です。

この展覧会、まず人の多さに驚きます。すでに50万人を超えたということですから、本展同様東京国立博物館で開催された去年の薬師寺展(約80万人)と同じくらいの総入場者数にはなるでしょう。平日でも1万5千人入ることもあるということですから、並ぶ覚悟をして言って下さい。ちなみに狙い目の時間帯は土日の夕方以降です(土日は20時まで開館しています)。

さて、平成館のエスカレーターを上って会場に入ると淡い赤でライトアップされた通路の先に2015年完成予定の興福寺金堂のVR(ヴァーチャルリアリティ)写真があります。なんとも恭しい展示ではないですか。そして、なんともお金がかかっているのです。主催の朝日新聞の熱の入れようが伝わってきます。

初めの部屋には、2000年以降発掘された数々の遺品が展示されています。たとえば金の延べ棒みたいなのとか、お金とか、銀椀、杯、水晶、ガラス玉、鏡などです。興福寺創建当時の遺品ですから、中国(唐)からの輸入品も多く、日本で造られたものと対比しながら見ることができます。どちらかというと、唐のほうが幾何学的で日本のほうがおおらかという感じです。この点については、陶器などと対照的でなかなか興味深いものがありました。もう一点、金や銀の延べ棒が出てきたということの意味をどう受け取るかが重要でしょう。簡単に言ってしまえば、興福寺はとってもお金持ちだったのです(今でもお金持ちでしょう)。それは、光明皇后の発案で建設されたこと、藤原氏の氏寺であったことなどに由来します。その興福寺の仏像は今でも「美術的価値」が非常に高いのです。今も昔も、必要なのはやっぱり金と権力ですね。皮肉ではなく、それらがあれば、本当にいいものを作ることができるのです。

次の部屋に入る前に、阿弥陀三尊像が展示されています。この展示のすごいところはこの像が逗子から出して展示されていることです。蓮がにょろっと伸びた上に阿弥陀仏が座っているのですが、その地の部分に描かれた「蓮の池」を見ることができるのは非常に貴重です。法隆寺では真っ暗な部屋の奥の方にある姿しか見られないのでこれはじっくり見ておいて損はしません。飛鳥時代の彫刻ですが、なんとも美的な価値はすでに完成されていると感嘆してしまうような造型だと思います。

次の部屋では、「八部衆」「十大弟子」が展示されています。普段は見ることのできない背中まで見られるのは貴重です。さて、本展では「阿修羅像」がメインになっていますが、「阿修羅像」は「八部衆」の中の一つです。これらの像は国宝に指定されていますが、指定された名称は「八部衆」だそうです。「阿修羅像」が早くみたいがためにこの部屋をさらっと見てしまいそうですが、これらも国宝なのです。さらに、「阿修羅像」と同様に非常に人間的な表情をしている点が興味深いです。少年の憂いとでも言いましょうか、手を合わせて「拝む対象」というよりは「共感の対象」に映ります。ちなみに私は「五部浄像」(上部しかない像)が一番好きでした。十大弟子も国宝で、これまた人間的です。私は「富楼那像」のような師匠が欲しいな、などと思いながらみていました。

さて次がいよいよ、「阿修羅像」です。スロープを降りると阿修羅をぐるっとめぐりながら見ることができるようになっています。「八部衆」の他の作品に比べてライトが様々な方向からたくさんあてられているので、その色彩や造形を細かく見ることができます。左周りに動きながら見て下さいと、再三警備員から指摘されるのでちょっとめんどくさい感じになりますが、やっぱりカッコイイですね。みうらじゅんも「阿修羅ってやっぱりカッコイイですよ」と言っていましたが、今現在でもイケメンだと思います。そして、たぶんソフトマッチョです。立ち方が不安定なのですが、その表情も不安定だと言ってよいでしょう。仏教上の「懺悔」の思想が背景にあるそうです。私には「懺悔」と同時に、何かを覚悟した表情のように見受けられました。そうした苦しいながらも前に進む若い像として見たとき、現在の美術的価値からみても、すばらしいものだと思います。

この展覧会にはさらに続きがあって、興福寺鎌倉時代の仏像を見ることができます。天平の仏像とは明らかに異なる像が並んでいます。それは、明らかに鎌倉時代という乱れた時代を表しています。天平の仏像と比較して最も顕著なのは「動き」が非常に大きくなることでしょう。躍動感は鎌倉彫刻の真骨頂だと思います。めずらしい薬王・薬上菩薩像も見ることができます。そして、近年運慶作だと分かった釈迦如来像の頭部も展示されています。この仏頭はすばらしいできだと思います。全てを受け入れた上で、さらに遠くを見つめる仏の顔はまさに「拝む対象」だと感じました。この展覧会の仏像の中で「拝みたくなる仏像ベスト1」は「釈迦如来像頭部」でした。

未だに仏像をミュージアムで見ることに多少の違和感を感じてしまいます。しかし、ヨーロッパでは宗教美術を「芸術」として鑑賞することはしばしばありますし、むしろ「芸術」の基礎は宗教にあります(科学の基礎もおそらく宗教にあるのですが)。その意味では、ミュージアムを輸入して150年たってようやく、museumという外来語を「日本の博物館」に翻訳でき始めたのかと考えたりもしました。


興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」
会場: 東京国立博物館
スケジュール: 2009年03月31日 〜 2009年06月07日
開催時間 9:30-18:00、5月7日(木)休館
住所: 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
電話: 03-5777-8600

「国宝阿修羅展」のすべてを楽しむ公式ガイドブック (ぴあMOOK)

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一個人 (いっこじん) 2009年 06月号 [雑誌]

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芸術新潮 2009年 03月号 [雑誌]

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阿修羅のジュエリー (よりみちパン!セ シリーズ44)

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若松孝二監督『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

「みんな勇気がなかったんだ」

当時未成年で少年Aと呼ばれた加藤元久が、あさま山荘で最後に叫ぶ。

このために若松は連合赤軍をテーマに映画を撮ったのではないだろうか。

リンチ事件メンバーにとっての勇気とは、森と永田に反対してリンチをとめることだろう。彼らにはその勇気がなかった。彼等を擁護することは全くできない。たったそれだけの勇気がなくても「革命」を信じることができた。そんな時代だったのだろう。

そして、森恒夫にとっての勇気は恐らく自殺だったのではないだろうか。森は逮捕された後すぐに自殺しているが、常に自殺を望んでいたように思える。



ストーリーは、数々の出版物で分析された結果をもとにしている。従って、森・永田=悪/坂口・加藤・遠山など=善とはいかないまでも「可」「被害者」として描いている。この点については、普通すぎてあまり面白くなかった。

そう、この映画は結局「映画は現実を超えることができない」ことを実証してしまっている。あまりにも凄惨な事件であったために、映画が陳腐に見えてしまった。

しかし、ウェブ上に書かれている識者の反応を読むと、「目をそらしたくなるような」内容だったらしい。確かにひどい。あまりにもひどい。しかし、現実はもっと凄惨だったはずで、それは出版物を読めば想像できる。そして、映画よりも本を読みながら頭の中で想像した情景のほうが凄惨なのだ。それでも識者が「目をそらしたくなる」のは、彼等がまだあさま山荘を乗り越えられていないからだろう。

換言してしまおう。彼等はまだあさま山荘を「総括」できていないのだ。


ところで、役者陣はなかなかよかった。坂井真紀はさすがである。女性らしいがために殺された遠山を見事に演じている。重信房子役の伴杏里とのシーンもかっこいい。しかし、重信の描写があまりにもかっこよすぎるのが目についた。その他にも、管理人役の奥貫薫もすばらしい。連合赤軍にも警察にも組みしない揺れる心を見事に演じきっている。彼女の演技が社会の捉えられ方を表しているのだろう。

しかし、何と言っても一番はARATAである。坂口はむちゃくちゃなやつではあるが、一番かっこよく描かれていて、ARATAがいることで画面が引き締まっていた。その他の役者は、演じすぎている面がある。それは、連合赤軍自体が演劇のようなものだったことに起因するだろう。しかし、ARATAがそのちゃちな演劇性に現実性を持たせている。この点は高く評価されるべきだろう。

○出演者
遠山美枝子:坂井真紀
坂口弘ARATA
永田洋子:並木愛枝
森恒夫:地曵豪
重信房子伴杏里
加藤元久タモト清嵐
あさま山荘管理人:奥貫薫
ナレーション:原田芳雄


特別賞は、チョイ役で出演していた宮台真司さんに差し上げましょう。


この他にも、あさま山荘を描いた作品はいくつかある。私はあさま山荘の演劇性を表現した「光の雨」が今のところ一番よかった。

今後も、あさま山荘を題材にした映画が撮られていくだろう。



公式ウェブサイト

ウィキペディア

若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

光の雨 特別版 [DVD]

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突入せよ!「あさま山荘」事件 [DVD]

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大浦信行「遠近を抱いて」出品拒否

沖縄県立博物館・美術館で開催予定の「アトミックサンシャインの中へin沖縄 日本国平和憲法第九条下における戦後美術」(渡辺真也キュレーション)に出品予定だった、大浦信行の「遠近を抱いて」というコラージュ作品が、館長の意向により出品取り消しとなりました。

「遠近を抱いて」はいわくつきの作品です。かつて富山県立近代美術館で展示予定だったにも関わらず、作品を売却、掲載されたカタログ全てを焼却されました。

なぜでしょうか。

「遠近を抱いて」は天皇裕仁のコラージュ作品だったからです。

今ではウェブサイトで見ることもできる作品です。また、「アトミックサンシャイン展」はニューヨークや東京でも展示されている展覧会で、その時は問題になりませんでした。

今回は館長の意向が大きいようです。これは、展示前に館長が作品を確認していたということですから、経営的にはよくできていたということになります。名目だけの館長も存在する中で、展示まで確認していたのは立派だと思います。

しかし、これは問題にならざるを得ません。大浦氏は富山の問題で、最高裁で棄却され全面敗訴、ということですから、展示しないという方針もありえるでしょう。しかし、少し時代遅れの勘を否めません。

例えば、電車のつり広告には天皇の写真がよくかかっています。週刊誌では天皇ゴシップは売れ筋のネタになっています。それが良いとは思いませんが、美術作品で天皇を扱うことが危険であるにしても、それを認めないわけにはいかないと思われます。

もう一つ、沖縄の特殊性が問題の一端でしょう。沖縄は天皇を批判する立場にあります。「本土批判」という沖縄の方の気持ちには私たち「本土人」何とも答えにくいのです。とにかく、沖縄の基地問題は早期に対処しなければなりません。そこには、当然アメリカとの関係があります。沖縄は「本土」と「米国」を怨み、羨む宿命にあるのです。

これについては、沖縄県民と「本土」の人間が長く議論を交わしていく以外に方法がないでしょう。しかし、日本を国家として本気で機能させようとするのであれば、必ず解決されなければならない問題です。

さらに、館長自身の問題があるでしょう。牧野浩隆館長は銀行出身なのだそうです。従って、マネジメント能力には長けているでしょう。さらに、政治力もあるようです。芸術についても理解があるのだと思います。しかし、一筋縄ではいかないのは芸術も同じです。マネジメント能力だけではどうにもならないときがあります。この問題にどう対処していくのか、注目したいと思います。

チンポムの「ピカッ」(広島)に続き、戦争の特殊な記憶を持つ地域で、美術と戦争についての問題が、同時期に起きたことになります。

もう一度、美術は戦争について考えなおさなければなりません。




沖縄タイムス 天皇題材の作品外す 県立美術館「九条」展

琉球新報「天皇モチーフ作品」外す 憲法9条企画展2009年4月14日

沖縄タイムス 表現侵害か教育配慮か 県立美術館・非展示/識者「県民に理由説明を」

沖縄新報「表現の自由」めぐり波紋 県立美術館の一部作品除外2009年4月16日






アトミックサンシャインの中へin沖縄 日本国平和憲法第九条下における戦後美術

大浦信行

ART iT 休刊

※根拠なく裏事情を想起させる文章が入っていますので、ご注意ください。情報源は以下のサイトのみです。

CINRA.NET「ART iT 休刊」



バイリンガル・アート・マガジンの季刊誌として、発売されていたアート・イットが6月5日24号をもって休刊することになったそうです。

今後は、ウェブ上のサービスに特化するそうです。もともと、アート・イットとREALTOKYOというウェブサイトは母体が同じだったわけですが、いよいよ不況の嵐、ということでしょうか。雑誌業界は広告収入が激減、さらに週刊新潮週刊文春ですらも販売数が減っているということですから、アートの世界でもこういうことが起きるのは必然だったのでしょう。

ただ、ウェブでどうやって収益を上げていくのでしょうか。アート情報には写真が不可欠ですが、それらには著作権料を払うか、事前の手回しが必要になる分、手間がかかります。大きなギャラリーに所属する作家の作品を掲載するのは多分大変なのではないでしょうか。さらに、アート関連のウェブ広告でどれだけ需要があるのでしょうか。かなり疑わしいと思います。だいたいがコネクションの世界ですからね。しかし、アジア全域を扱うそうですから、新しいビジネスモデルを示すことができるかもしれませんし、本当にアジアの中心サイトになるかもしれません。

ところで、アート・イットの創刊当時は、私も買っていましたが、最近はめっきり買わなくなっていました。テキストを読むだけなら、立ち読みで最初から最後まで読めてしまう内容でしたからね。逆に最近、美術手帖をよく買っています。最近のアート・イットはどうも狙いすぎな勘がありました。ある程度の質は確保されていましたが、手元に置いておいて見返したいとは思えない内容だったと思います。一方で美術手帖は、テキストの質が断然上がっています。現代美術の王道で勝負、という姿勢が垣間見えます。このあたりの戦略の違いは、販売数に影響しているでしょう。


全部勘で書いたので、事実とは異なる部分が多いと思われます。単なる読み物として、受け取って頂きますよう。

ジェネラル・ルージュの凱旋 海堂尊

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(下) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(下) (宝島社文庫)


読まなければならない事情があったので読みました。実は他の海堂作品を読んだことがありませんでした。正直あまり面白くなかったのですが、他の作品を読めばもっと楽しめたのだろうと思います。ちなみに本作は『ナイチンゲールの沈黙』という前作と同じ時間に起った出来事が書かれてあるそうです。

ストーリーは大学付属病院で展開します。ドクターヘリの導入を強く希望する救急救命部長の速水、それからおなじみのお人よし心療内科医田口、ロジカル・モンスター厚労省の白鳥。本作での視点キャラクターは正義感の強い看護婦翔子です。

病院内で様々な確執を持つ速水を中心にストーリーは展開します。簡単に言えば、上記のキャラクターたちが正義で、その他の悪キャラと戦うという内容です。内容としてはそれだけです。伏線らしきものは存在しますが、特に驚きはありません。伏線というよりは、事前に結果をばらしておくと言ったほうがいいと思います。だから、読み進めても「そうだよね」というだけです。

端的に言って、読みやす過ぎる本でした。こんなに単純なストーリーでいいの?って感じです。ただ、それだけ単純なものを書いてもある程度読ませるのはすごいと思いました。そして、単純なだけに映画にはしやすいだろうなとも思いました。映画版は田口が女性になっていたりしますが、役者がいいので、絶対面白いだろうと思います。そろそろ終わってしまいそうなので、見に行ってみようかと思います。竹内結子、阿倍寛、堺雅人という役者陣は、むしろ卑怯だろって感じですよね。魅力的すぎます。そして、それぞれのキャラクターにばっちりあってます。

ということは、面白くないとかいいながら結構はまっているということなのかもしれません。

ザ・エンターテインメント。という感じの作品です。




映画版ジェネラル・ルージュの凱旋

動画いろいろ

これは結構すごいような気がする。

私はまったくオタクではないのですが、ハルヒには萌えます。

これは新しい展開。手話は面白い。

こういうの懐メロでやってほしい。おっさんホイホイ的な感じで。

PSPで初音ミクプロジェクトやる予定みたいですね。知りませんでした。はたしてセガの戦略は成功するか。
初音ミク プロジェクト ディーバ

実写合成動画。おもしろい。