リー・ソーユン So-Yeun Lee展

リーのポートレイトに描かれた少女には表情がない。さらに彼女の存在自体も浮遊しており、背景や服と人間が同時に、かつ同じ場所に存在しているようには見えない。

彼女はポートレイト部分からできるだけ感情的な要素を排除して、人物に現実感と非現実感を同時に与えたいと言う(art_icle3月号より)。そして、むしろアクセサリーを重視している。そこには私たちの存在に対するラディカルな問題提起がある。

私たちは個人として存在してはいない。私たちの肉体は環境として存在している。だとすれば、私たちの肉体も周りの背景やアクセサリーと同様に浮遊しているはずだ。肉体は何ら特権的な存在ではないのである。

それでも、人物は環境の中に存在し、環境の中から浮かび上がる。そのイメージは環境そのものである。無表情なキツネ目の女は環境として存在しながら、環境を全て自らの中に取り込む。彼女のポートレートの中の女が不気味な存在に見えるのは、彼女の存在が浮遊しているからではなく、彼女が環境を自分という存在へと変化させるべく、自らの内側に取り込み続けているからなのだ。


Gallery Terra Tokyo

リー・ソーユン 展
会場: Gallery Terra Tokyo
スケジュール: 2009年03月13日 〜 2009年04月09日
住所: 〒106-0041 東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1階
電話: 03-5575-6685 ファックス: 03-5575-6686