横田尚展

魚眼レンズで至近距離から覗いたように奇形した女と金魚。見られるために作られた人工的な肌。しかし、女の頬や手、お尻は赤くなっている。見られることを受け入れているのだろうか。それでも、女は平べったい無表情。恐らく女は私たちの視線にうまく対処することができずにモジモジしているだけなのだ。

女と書いてきたが、横田の描く女は少女と言ったほうが良いだろう。成長途上にある少女の身体からはセクシャルな感じを受けない。そのようにして、女性性を放棄しながらも、厚い唇は愛に飢えているようだ。従って、むしろ彼女を全面的に受け入れる親への愛を求めているのかもしれない。

親からの愛を女性として求めることの困難さ。大人になった女は、現在の自分に投影される少女の影を愛してほしいのだ。さらにそれを求める対象は、大人の男だろう。そんな男はいないと分かっていながらも、理想の男に見られていることを想像して頬を赤くする。自分の立場を認識しながらも、赤くなることを隠さない、とてもプリティーな少女の像である。しかし、倒錯した彼女のプリティーさを受け入れることのできる人間は、世の中にそう多くはいないように思う。きっと彼女は満足できないまま、「それでも私は幸せだわ」と自分に向って言い続けるだろう。


ギャラリー椿
横田尚 展
会場: ギャラリー椿 / GT2
スケジュール: 2009年03月18日 〜 2009年04月01日
住所: 〒104-0031 東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
電話: 03-3281-7808 ファックス: 03-3281-7848