広瀬直子展

東北芸術工科大学修士課程を卒業した、日本画家の個展である。

非常に素朴な出で立ちの作家は、東京出身だそうである。なぜ東北くんだりまで行ってしまったのかよく分からないのだが、修士まで勉強した日本画との相性は良い。もともと、岩絵具を好んでいただけあって、岩絵具のキラキラする粒子をうまく利用していた。

素朴な外見に比べて、関心事はなかなかディープで、今の関心事は「時間」「生」などだそうだ。まともに論じればどうにもならないので、敢えて正面から取り上げられてこなかった、あるいは理論武装してコンセプチュアルに取り上げられてきたテーマを、率直に関心事だと言ってのける。その素直さ、というよりは純真さが彼女の持ち味だろう。

描かれているのは、葉か、あるいは花びらである。彩色されているものと、輪郭だけのものが入乱れて「吹き寄せ」られている。そこには時間や光の重なりが存在する。単一系統の色彩で描かれた画面からは、静かに流れる時間と強い意志を感じる。あまりに純真すぎて、美しさを忘れるくらい静かな風が吹き寄せている。

描きこまれた線と、しっかりと考えられた構図に彼女の魅了があるだろう。その純真さで次は何を描くのか、楽しみだ。


広瀬直子 展
会場: なびす画廊
スケジュール: 2009年03月30日 〜 2009年04月04日
住所: 〒104-0061 東京都中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F
電話: 03-3561-3544 ファックス: 03-3561-3544