坂本友由展

シンクにためられたイチゴの中で、キッチュなイチゴの帽子をかぶって涙する緑髪の少女。白いゴスロリ服を着て、布団の上に座る涙目の少女。

坂本が描く少女は、フラットに見える。誰かに凌辱されたのか、少女はいつも涙目、あるいは涙を流しているのだが、髪の色や服装が現代的であったり、キッチュな服装をさせられたりしているので、フラットな風情があるのだ。それは、アクリルという素材の性質を存分に生かしているともいえる。

ただ、近寄ってみればその描写は細かく描きこまれていることが分かる。まるで、雑誌用に加工された芸能人のグラビアのような、肌の質感である。そこには作られた少女がいる。

ところで、少女たちはなぜいつも涙を流しているのだろうか。凌辱させれたかに見える彼女たちだが、果たして凌辱したのは誰か?それは彼氏なのか、通り魔か、あるいは作家か、それとも想像上の凌辱に過ぎないのか。

好意的に観れば、少女を凌辱する視線を向ける作家自身、あるいは社会をアイロニカルに捉えて表現しているのだと解釈できるだろう。ただ、あまり頭でっかちに解釈しても仕方がないようにも思える。

素直にみると、少女たちは作家によって凌辱されている。それをアイロニカルに捉える視点を画面から感じ取ることが、残念ながらできなかった。描き込まれた線からは、少女に対する過度な視線を感じずにはいられない。作りこまれた少女に対する凌辱を見せつけられることは、あまり気持ちの良いものではない。その視線が社会性を持てば共感や反感を抱くことが可能なのだが、作家個人の感情の吐露である限り、個人の内にとどめておけばよいことである。その限りにおいては、誰も批判はしない。いや、作家はそのことを暴いて見せたのだろうか。どちらにせよ、その意図を作品から感じることができなかったのが、残念だ。


坂本友由 展
会場: 銀座芸術研究所
スケジュール: 2009年03月23日 〜 2009年04月04日 18:00
住所: 〒104-0016 東京都中央区銀座7-3-6 洋菓子「ウエスト」2階
電話: 03-5537-5421 ファックス: 03-5537-5421