『春のめざめ』劇団四季@自由劇場

青春の葛藤、親子の問題、過激な性表現、2007年のトニー賞受賞作は劇団四季としては異例の脚本だったらしい。特に性表現についてはいろいろな意見が見られた。ところが、いざ見てみるとお尻を出していたり胸を出していたりするくらいで、全く過激ではない。普通である。むしろ物足りないくらいだった。本当はそんなことはどうでもよいのだけれど、劇団四季の客層にとっては過激だったのだろう。あまりに潔癖すぎて危険だと思った。

さて、内容は確かに青春の葛藤を見事に描いています。ポイントは無知です。あるいはイノセントと言ってもよいでしょう。教師や親への反抗はむしろ小さな問題で、それに「対処する方法を知らない」ということを中心に描かれています。とても些細なことで子供ができてしまったり、自殺してしまったり、結局「生きて行こう」と決意したり。さらに大人も些細な問題を過大に受け止めて中絶させようとした娘を死なせてしまいます。無知ゆえに些細なことを過大に受け止めてしまうナイーブさ、あるいは肉体の成長に見合わない無垢な精神。そうしたイノセントを評価しすぎているところはあります。しかし、100年という時間や、ドイツと日本という国境を感じさせない青春の共通体験には何かしらの普遍性を感じずにはいれません。

もう一つのポイントはエインターテインメント性の高さでしょう。芝居中ずっとピンマイクを使っているのですが、歌うときは普通のマイクを持ちます。マイクを持った時だけ解放されるロックならではの爽快感をさらに高める演出でした。

ただ、ドイツ、ブロードウェイから日本に輸入する際の弊害も見てとれました。宗教問題と同性愛の問題が非常に大きなテーマになっているのですが、それがあまりにも簡単に流れて行ってしまうことです。宗教問題についてはもっと分かりやすく提示するべきです。青年達の授業風景によってそれが示されているのですが、ラテン語やルターを読んでいる描写だけでは私たち日本人にとってはよく分かりません。また、同性愛についても思いっきりディープキスをする体をはった演技にも関わらず客席からは「きゃー」っという笑いが漏れていました。こうした反応を読んだ上で、観客の反応を先回りした日本式の演出が見たかったです。もちろんブロードウェイからのお達しもあったのでしょうが、それをなんとかかんとかうまくやり過ごせるのは劇団四季くらいなのですから、がんばってほしいと思います。

それからステージ上の設置された席で観劇したのですが、足を組んでいたら注意されました。だったらステージシートなんか作るな!とキレそうになりました。1時間×2をじっとしたまま見ろ!ってことか!?別に邪魔してるわけじゃないのに。







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