ジェラティン展 gelitin

絶対に面白い!

オーストリア出身のアーティスト集団(4人)。ガゴシアン(ロンドン)などで個展を開催、数々のビエンナーレに出品など、超有名アーティスト集団ですが、面白すぎます。


まず、龍安寺を見立てたパフォーマンス。龍安寺枯山水の岩。いや、あれは人体だ!

そう、水に見立てられた小石の中からにょきにょき出ているのは、生身のお尻や髪の毛、腕なのです。そもそも、山や水を見立てた枯山水。それを、リアルなものに還元すると人体になってしまいました。岩役のパフォーマーたちはかなりの重労働らしく、もそもそと動いていました。

見せ方も秀逸です。モネの庭にあったような、極端に高く丸まった橋を渡り、壁に開けられたちっちゃい穴をくぐらなければ龍安寺にはたどり着けないようになっているのです。壁の穴は茶室にあるようなにじり口のパロディでしょう。そして、庭を見るために作られた座ることのできる段。まさに龍安寺と同じです。

しかし、ここで気づくのは、私たちは枯山水を「見る」特権的な地位に持ち上げられているということです。枯山水は鑑賞者よりも下に位置しているので、鑑賞者のほうが舞台に上がらせれていることになります。しかし、そこで私たちは舞台俳優のように振る舞うことができません。どう振る舞えばいいのか分からないのです。ただ、段に座って男たちのお尻を鑑賞するのです。鑑賞するとは何とも特権的で、なんとも難しく、そしてプロフェッショナルでないのに舞台に挙げられてしまう私たちにとってはとても恥ずかしい体験なのです。

さらに、キッチュすぎる龍と女性を粘度でつくった絵画。本当にキッチュすぎて馬鹿にしているとしか思えません。日本人だけでなく、作っている自分たち自身のことも笑っているのです。同様にタコの絵画作品も展示されていましたが、それもオクトパスを酢飯にのっけて生でぱくぱく食べちゃう日本人の戯画でしょうか。

完全に思いつきでやっているとしか思えない作品群。しかし、それが直球で現代美術史にズバッと入り込んでくる。アーティストは彼等の作品に恐怖するのではないでしょうか。というか、恐怖するべきです。日本にふらっと立ち寄ったウィーンのアーティスト集団が、日本の宝龍安寺を肉体として蘇らせたのですから。それらの作品は、生な勘によって生み出され、生の肉体で表現されています。

私たちは、少なくとも近代以降、肉体を忘却していました。理論と政治化の時代を通り過ぎたあと、私たちにはもはや肉体しか残されていません。そして、彼等の肉体は、鑑賞者の肉体の中に歴史を復活させるのです。そのとき、歴史はもう一度始まります。



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ウィキペディア ジェラティン

小山登美夫ギャラリー
龍安寺のパフォーマンスは土曜日のみです。ウェブサイトで確認して行って下さい。

gagosian gallery

インタビュー

ジェラティン 展
会場: 小山登美夫ギャラリー
スケジュール: 2009年04月11日 〜 2009年05月09日
住所: 〒135-0024 東京都江東区清澄1-3-2-7F
電話: 03-3642-4090 ファックス: 03-3551-2615