河口龍夫 「言葉・時間・生命」@東京国立近代美術館


一応書いておかなければならないかなぁと思いまして書きますが、正直あんまり好きじゃないです。ただ、何かを書きたいと思わせられる作品ではあります。だからこそ、大澤真幸さんなど他の分野の学者も彼の作品に言及するのだと思います。それから最近、河口龍夫人気がすごいですね。兵庫県立美術館、名古屋美術館でも大きな個展が開催されています。こんな風に大きな展覧会ばかり日本でやっている作家については大御所の批評家がたくさん言及しているので、そういうのを読むとまぁ彼らが言っているのだから私が何か言う必要もないかなぁなんて思ったりします。

でも一応書きます。

私が好きな作品は「DARK BOX」という作品だけです。これはただ、金属の箱に無をおさめただけの作品です。無というよりはDARKなわけですが、それをおさめてボルトで留めています。すっごい重そうな金属の箱であることが重要だと思います。実はそんなかっちりしたものでなくても、たとえば光を遮断する黒い袋とかでもいいわけです。しかし、とっても重厚なBOXに入っている。

要するに、暗闇に重さを与えようとしているわけです。そしてその重さとは意味です。DARKから意味を抽出することがこの作品なんですね。だからインスタレーションみたいに身体的な衝撃があるわけでもなく、絵画のように視覚的な衝撃があるわけでもない。

すると、この作品は極めてコンセプチュアルであるということになります。もの自体は全然面白くない。でも、DARK BOXと書かれた箱を見ると暗闇の意味や時間の意味を読み取ろうとしてしまう。そういう意味でコンセプチュアルなわけです。

ただ、これもまたDARK BOXという言葉が分からなければなんとも面白くない作品になるでしょう。だから、これは非常に記号的作品でもあります。ここもコンセプチュアルな点です。

さて、他の作品では様々な植物の種子を鉛で固めたりしています。これはこれでいい作品ですが、いきなり造形的になっていて、しかもあんまり美しくないと思います。これは私の好みの問題です。だから好きな人は好きだと思います。ただ、なんか古くさい感じがしてしまうのは私だけでしょうか。

もっと言ってしまえば、とっても1960年代末期的な匂いがするんですね。グループ「位」とかもの派とか。古き良き反体制。そこから本当に脱却しているのでしょうか?いや、脱却してなくてもいいんですが、脱却しなきゃだめだと私が思っているので、河口が脱却していないのであれば好きではないということになるだけです。偏見です。

今回のテーマは「言葉・時間・生命」です。その他にも関係がキーワードとしてよく使われます。そういうキュレーションや批評も面白いのですが、やはり同時代の作家との比較の中で彼の作品を見ていったほうが興味深いのではないかと私には思えます。

でも別にキュレーションも悪くないと思います。ただ、私が河口の作品を好きになれないだけです。それは、コンセプチュアルなのに、コンセプチュアルじゃないふりをしているからです。まぁそれだけです。ごめんなさい。




河口龍夫 「言葉・時間・生命」
会場: 東京国立近代美術館
スケジュール: 2009年10月14日 〜 2009年12月13日
住所: 〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
電話: 03-5777-8600(ハローダイヤル



河口龍夫オフィシャルウェブサイト

関係と無関係―河口龍夫論

関係と無関係―河口龍夫論