chim↑pom

チンポムについてこんな記事がありました。



原爆ドームの空に“ピカッ”で『Chim↑Pom─ひろしま展』中止となった問題を考える




何かと話題になったピカッという作品についてのアンケートです。(「事件」の内容については書かないので、上記の記事や出版された本などを参照して下さい。)
そこで、私もアンケートに答えてみました。





チンポムの作品は以下のサイトで見ることができます。

DAX
DAX my space


なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか

なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか

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【質問1】Chim↑Pomは謝罪するべきだったのか?するべきではなかったのか?

するべきだった。





【質問2】質問1で回答した理由を教えてください。

例えて答えます。チンポムがミュージシャンだったとしましょう。

ミュージシャンが家で楽曲の録音をしていました。ところが、大音量で演奏していたために、ご近所さんから苦情がきました。

さて、この場合どう対応するのが誠実でしょうか?もちろん、謝罪するべきです。これを突っぱねて演奏を継続していたら、迷惑防止条例などに違反することになります。ただ、一回目なら謝罪で済むでしょう。

では、事前にこのような事態を防ぐためにはどのような対応が考えられるでしょうか?簡単に言えば、事前に合意ができていればOKです。たとえば、午前10時から午後4時までは一定の音量を出しても構わないという合意を交わすことができます。これと似た合意は、子供のピアノ練習など、マンション等ではよく交わされているものです。そして、午後6時に音が漏れたとすればそれは違反になってしまうわけです。しかし、合意がなければどうにもなりません。事前合意がない場合は、法律(条例)に違反するかどうかで判断されるでしょう。あるいは、一般的な常識で判断されることになります(常識をやぶったところで誰も罰することはできませんが)。

チンポムの場合は法律にも条例にも違反していません。しかし、常識で考えて事前の合意なく音が漏れたのであれば謝罪すべきなのと同じように、チンポムも事前に合意なく迷惑をかけたのであれば謝罪するべきでしょう。ただ、これを強制することはできません。なぜなら、法律(条例)に違反しているわけではないからです。それでもチンポムは謝罪しました。常識的な態度だったと言えるでしょう。

ただ、事前の配慮は明らかに不足していたと思います。事前合意はありませんでしたし、事前に対応も考えていなかった。浅はかだったのは確かです。

ところで、チンポムは迷惑をかけた人に直接謝罪するだけで十分だったはずです。ところが、今回の「事件」ではマスコミを通して謝罪会見が報道されました。

ここで疑問なのは、果たしてチンポムは誰に謝罪しただろうか、ということです。ウェブに掲載されたチンポムの謝罪文では「このたび僕たちが作品制作のために、広島で行ったことに対し、被爆者の方々、ご遺族、ご家族、並びにその関係者の皆様に大変不快な思いをさせてしまいましたことを、深くお詫び致します。」ということになっています。しかし、出版物を見ると少なくとも被爆者団体は不快ではなかったようです。むしろ被爆者団体の方に激励されたそうです。従って、謝罪の対象は少なくとも被爆者団体ではない、ということになります。しかし、被爆者団体が被爆者全ての心を代弁しているわけではないでしょう。むしろ少数派かもしれません。だとすれば、被爆者団体を除く多くの被爆者およびその関係者を対象に謝罪したといことになります。そういうことなら、謝罪の対象は明確だと言えるでしょう。そして、何かしらの迷惑をかけたのであれば、彼らに対する謝罪は必要だったと思います。

謝罪会見はテレビや新聞などマスコミが報道しました。迷惑をかけた人が多数に及ぶからこそ、マスコミをとおしての謝罪会見となったはずです。マスコミが謝罪会見を報道するということは、それだけ多数に向けられた謝罪であったということになるのではないでしょうか。果たして、チンポムの謝罪がそれほど多数の対象に向けた謝罪だったのかどうか、疑問が残ります。繰り返しますが、謝罪は必要です。ただ、少なくとも被爆者を家族に持たず東京に住んでいる私に対しての謝罪でなかったことは確かです。というか、私は謝罪を求めていません。また、チンポムを批難する権利が、そもそも私にはありません。いや、私はまったく迷惑を被っていません。例え、ピカッの写真を見て不快に思ったとしても、ただ個人的に不快に思っただけです。不快な写真など世の中に溢れていますし、それに対していちいち文句も言いません。そして、そのような写真を撮った撮影者に対して謝罪を求めたりもしません(法律や条例を犯していれば話は全く別です)。従って、チンポムのピカッ撮影およびそれに付随する行為について、直接的に被害を被った人に向けて謝罪をするにあたり、最も有効な方法としてマスコミを通しての謝罪が行われたということになるでしょう。チンポムはその方法を選択したわけです。私は、マスコミを通しての謝罪はベストな方法ではなかったと思います(マスコミを通すほど多数の対象はいない、被害者に会って謝罪するのがベストだった)が、筋は通っています。

ここで、ピカッがマスコミで報道されるだけの大きな「事件」であったとしましょう。そうであれば、「被爆者を不快にさせる行為を禁止する」といった内容の法律(条例)を制定する必要があります。マスコミは「事件」を取り上げた以上、このような法律(条例)を制定する場合にどのような内容にすべきかを議論してもよかったのではないでしょうか。<DQNなアーティスト紛いの輩 VS 美術館>という「ネタ」として意図された記事ではなかったはずですから、マスコミは記事の意図を明確にするべきだったと思います。

もう一度、冒頭に用いた例えに戻して個人的な答えを書いておきます。

「事前の合意なく、作品を録音するために大音量を出してしまったチンポムは、大音量に迷惑した隣人に対して、謝罪するべきである」








【質問3】中国人現代美術家・蔡國強(ツァイ・グオチャン)の作品「黒い花火」と、Chim↑Pomの今回の作品「ピカッ」との違いはあると思いますか?

ある・ない






【質問4】質問3で回答した理由を教えてください。

質問の狙いがよく分かりません。

「ある」と答えたとしましょう。そもそも、違うアーティストの違う作品です。違うに決まっています。あるいは、「事前合意をした上で大音量を出したミュージシャン」である蔡に対して、「事前合意なく大音量を出したミュージシャン」のチンポムという違いはあるでしょう。

「ない」と答えたとしましょう。大きく戦争/平和という二項対立で考えれば、どちらも平和よりの作品であることは明らかです。また、手法がすぐに消える素材であり、空中に放出される「煙」であるという点で似ています。



Chim↑Pom 「広島!」
会場: Vacant
スケジュール: 2009年03月19日 19:00 〜 2009年03月22日
開場時間: 13:00〜20:00
住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-20-13


問題となった「ピカッ」「リアル千羽鶴」が展示された展覧会です。展覧会は短期間だったので、見られた方は少なかったと思います。私が見た限りとてもよい作品でした。今はそれだけ書いておきます。chim↑pomについては、いずれ詳しく書きたいと思います。